失踪日記


失踪日記
失踪日記
posted with amazlet on 06.02.13
吾妻 ひでお
イースト・プレス (2005/03)

マンガ好きにも2種類の者がいると思う。
それは、ただマンガが読めれば良いという収集癖のない人と読めればいいというだけでなく、ちゃんと形となる紙としての物(本)を所有して本棚に収めたいという人だ。(分かりやすい例で言うと、週間の雑誌を買ってる人で、読みおわると友達にあげちゃうような人は前者で家にため込んでいる人は後者であろう。)僕はもっぱら後者で、半年に1度は必ず本棚の整理をしてしまうぐらいで、1列目と奥の2列目を1軍と2軍と決めて、「こいつは面白くないから2軍行きだ!」なんてやってる始末だ。
そんな収集癖のある人は当然、本自体にも気を使う。読んでるときにカバーや帯を外して読むそこのあなた!決して、みみっちくはありません。本を愛するからこその行為なんです。
そこで、本題の『失踪日記』なのだが、こいつが内容はひとまず置いといて本の印刷・装丁・製本がすこぶる素晴らしい。上質で真っ白な紙。よく見かける小口(本の開く側)がへっこんでたりでっぱてたりするミスは当然ない完璧な製本。帯とはもう言い難いカバーと同じ材質で太い奇抜な装丁。対談や裏インタビューなんかもあって、今までで1番完璧な本だ。

でも、いくら外見(そとみ)が良くても内容が良くなきゃ話にならない。しかし、こちらもすごくいい。
この自分の自虐的な生活を客観的に見てネタにするという作業には本当にすごいなぁと感心してしまう。自分が自殺しようとしたことも笑いにしてしまうのだから。
こういう部類の人は他にも『刑務所の中』の花輪和一さんや『漫玉日記』の桜玉吉さんなんかがいるけど、どこかみんな壊れちゃっている。本当にマンガに命を捧げたって感じで、こういうマンガは読み捨てできない重厚感があって何度も読んでしまう。絵も一見、苦手な感じかなと思ったが、上手で意外に読みやすく、形実共に秀作であると思う。
B+α