誰も知らない


誰も知らない
誰も知らない
posted with amazlet on 06.02.13

この映画、子どもが親に捨てられてそれでも健気に生きつづけるという話なのだが、僕はこれを観て非常に自分とシンクロしてしまった。
それは僕が小学3年生ぐらいの時に、母親がいなくなってしまったからだ。
その時は、父親が会社を独立させて波に乗るかどうかという時期だったので、かなりハードな仕事だったようで、父親はもちらん母親も家事をしつつ、仕事の手伝いをしていたのだ。そのハードな生活と仕事の事に関して厳しすぎる父親のせいで、耐えられなくなり、どこかに行ってしまったのだった。その時に見た「もう、お母さんと会うことはないでしょう」と書かれた置き手紙は今でも忘れることが出来ない。
そして、その置き手紙の妙に第三者的な突き放した感じと『誰も知らない』のYOUさん演じるお母さんから届く「お兄ちゃん面倒見てあげて、よろしくね。」という手紙の、信頼の「よろしくね」から突き放した「よろしくね」に変わった妙な感じとがシンクロして「グラッ」ときてしまったのだった。
他にも、
・母親がもう帰ってこないことに気づかない弟の無邪気さ。
・お母さんのぬってっくれたマニキュアがはがれていくところ。
・背伸びしてようやく見える、窓の外の世界。ちっちゃい足が一生懸命伸びてるシーン。
などの細かい描写が非常に良く表されており、この辺は素直に感心してしまう。
他の人のレビューを見ていると、よくストーリーがダラダラしていて面白くなかったという意見が多かったが、こういう小さなブレを読みとると、ストーリが決して平坦ではないという事がわかると思う。
あと、主演の柳楽優弥君が2004年度カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞したらしいが、正直、そんなにスゴいとは思わなかった。それよりも、茂役の木村飛影君や、ゆき役の清水萌々子ちゃんの演技の方が目立っていて、あの純真な笑顔にはそういう趣味のない僕でも思わず、かわいい〜と思ってしまった。(この笑顔の効果もあって、最後の死が余計にグッとくるのである)だから、僕が思うにこの4人ないし5人全体の演技の評価がカンヌ主演男優賞という形で評されたのだと思う。
なんか、最後のシーンは賛否両論らしいのだが、あのまだ誰にも知られずにまた子供たちだけで生活し続けるという最後が、こういう問題はまだ終わっておらず、日本のどこかにまだこの子たちが健気に生きていますというように見えて心打たれたのは僕だけだろうか…。
こういう繊細なブレの描写こそ、やはり邦画の得意とする部分でもあり、醍醐味だなとしみじみ思い直した一作である。
B+α