ぼくんち


ぼくんち―スピリッツとりあたまコミックス (1)

ぼくんち―スピリッツとりあたまコミックス (1)

知ってる人は知っている西原作品である。
この作者、西原理恵子は2つの面を持っている。1つは最近の西原に多いハチャメチャ系の作品である。もう1つはこの『ぼくんち』のような叙情的な作品である。
僕はこの西原の叙情的な部分を非常に評価しているのだが、その中でもピカイチなのがこの『ぼくんち』である。
僕は正直、最後泣いてしまったのだが、だいぶ絵によって泣かされた部分もある。一見、汚そうな絵なのだが実は結構上手いのである。笑っているようにも泣いているようにも見えるその笑顔がにくい。(マンガで泣いたのは実はこれ一作品だけだ。)
話としても尋常じゃなくスゴイ。もう底辺も底辺の人の生活を描いており、
例えば、薬のやりすぎでおとうちゃんが死んでしまった女の子がおとうちゃんがいなくなったので、おとうちゃんの茶わんを割り「腹、へったなぁ〜」と笑ったり、愛し合っている夫婦が生きて行く為に妻を商品として売るんだけど、750円と叩き値切られ、夫が「うちの子幕の内弁当よか安うせんといてくださいや。」と笑ったり、4人も子供がいるおやじが仕事のご褒美でもらったうなぎを子供に食べさす為に「朝からハラの具合がわるうて。ちょっと食欲ないからもってかえって食うとね。」と嘘をついて笑ったり。
そんな中でも夢を語る。非常に美しい物語だ。


(今、『ぼくんち全』というオールカラー全3巻だったものを白黒の普及版として一冊にまとめたものがある。でも、できればカラーの方を買って欲しいと思う。今でいうと、インターネットぐらいでしか手に入らないと思うが、頑張って手に入れて欲しいと思う。)


他の西原マンガ
『ゆんぼくん』 B+ (『ぼくんち』的な作品。四コマじゃなかったらもっと面白かったと思う。)
毎日かあさん』 B+ (おかあさんの視点から子供を見た作品。どちらかと言うとハチャメチャ系。でも2巻目に収録されているアジアのこどもたちの所はグッとくる。)
『上京ものがたり』 C (最近の絵本調の類のもの。自分の成功を書いただけあって、少し良い話しすぎの感がある。)
『女の子ものがたり』 Bα (なんか漠然とした青春というテーマを一冊にすると、割と展開が速くなって、あの『ぼくんち』特有の中毒性が弱い気がする。やはり、『ぼくんち』は尋常じゃないね。)