谷口ジロー作品

谷口ジローが一番好きだ!」という人を見たことがいない。恥ずかしながら、僕自身も決して一番好きではない。なぜか?
地味だからだ。地味すぎるからだ。
しかし、僕はこれがマンガの真ん中だという印象を持っている。セリフだけで綴られるマンガや紙芝居のようなマンガやパズルのようなマンガなどたくさんの風変わりなマンガが存在する。それを否定するつもりはないが、谷口ジローの作品にはそんなものにとらわれないどっしりとした気風を感じさせてくれる。
なので、前衛的とされる漫画家ばかりを追っている人を見かけるとつい肩を叩いて谷口ジローを勧めたくなってしまうのだ。

孤独のグルメ
孤独のグルメ
posted with amazlet on 06.07.13
久住 昌之 谷口 ジロー
扶桑社 (1997/10)
サラリーマンのお父さんが一人フムフム言いながらB級グルメを食すマンガ。これはもはや、グルメマンガというよりオヤジマンガだ。
大の大人が回転寿司で食べ終わった後に最初に言う言葉が「ラストの2枚……あれが効いたな」はないだろう。しかも、タバコを吸って完全に決めゴマなのだ。谷口ジローのハードボイルドなタッチにそのセリフ。何のことはない、ギャグマンガなのだ。
大人が一人で焼肉を食いまくり、「俺ってまるで人間発電所。」なんて言ってしまうこの男の孤独なグルメを見ているとついこちらも楽しくなってしまう。
谷口ジローの秀逸な絵と原作者・久住昌之のセンスが見事にマッチした何度見ても飽きない見事な一作だ。
A−

神々の山嶺(いただき) (1)
夢枕 獏 谷口 ジロー
集英社 (2000/12)
同じく原作付きの作品。夢枕獏が書いた同名小説が原作である。
この作品、山を登る男たちの話なのだが、これは絶対に谷口ジローしか書けないと言っていいと思う。原作者の夢枕も「谷口ジロー以外にはない」と断言している。それは、山の質感・壮大さをこれほどまでに上手く表現できるのは、谷口ジローしかいないからだ。
山に登る男たちの息遣い、どれほど山に登るということが厳しいことか、これを読んで分からない人はいない。
読んだ後、自然と自分の息遣いも荒くなる。谷口ジローが山へ導いてくれるのだ。
(リンク:http://plaza.bunka.go.jp/festival/backnumber/13/sakuhin/kamigami.html
B+α