立喰師列伝

実は、この映画『立喰師列伝』の評価をどうすべきか悩んでいた。大衆受けするものではないし、押井守作品の中でも一番良いというものではない。
では、駄作だったのだろうか……。
しかし、その「駄作」という烙印を押そうとするといつも自分の中で「でも、個人的には意外と好きな作品なんだよな〜」という気持ちが邪魔をして簡単にはその烙印を押せなかったのだ。
リアルと虚構を織り交ぜながらの戦後史を通して、立喰師列伝というこれまた虚構の職業を描くというのは胡散臭くて面白かったし、その胡散臭さを饒舌な押井節という語りで塗り固めていくというのもそれに輪をかけて、もはや嘘臭い雰囲気を醸し出していて、かたよった趣向の娯楽作品が好きな自分としては割と飽きずに最後まで楽しめた。
では、「映画」としてどうだったのかと聞かれると正直口ごもってしまう。とうとうと語られるナレーションに絵が時々パタパタと動くだけ。。 どう考えても「映画」的には失敗だ…。
じゃあ、どうすれば良かったのか。
僕はラジオドラマにすれば良かったんじゃないかと思っている。先ほども言ったように基本的には音声を主体としてキーワードになる部分の絵をスライドショーのようにただ見せているだけの映画だ。とすれば、このスライドショーのような映像は個人の想像の中だけでも十分に可能で、必要ない映像なのである。一度、映像を観ずに音声だけで楽しんでみればいい。そうすると、案外こんな映像あってもなくてもどっちでもよくなってくる。(あの映像自体に魅力がわかなかったので、余計そう思ってしまったのかも知れないが。。)
そういう意味でも、元々押井さんの個人的な趣味の映画なんだから劇場公開映画になんかせず、ラジオドラマ・CDドラマなんかにした方が押井守好きとしては困惑せずにすんだのになーと思った。
話自体の嘘くささは大好きだが、映画としてはちょっと… ということを考慮してこの評価 B+