うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー


る星やつらと押井守の関係はTVシリーズからのものであったが、このTVシリーズがどうやらかなりくせものだったらしい。
当時、押井はこの仕事を受けてみて青ざめたという。スタッフが全くいなかったのだ。しかし、即席で人をかき集めてなんとか話を作り、原画や動画は全て他のプロダクションに依頼しまくって凌いだという。
劇場版1作目に関しても押井の手に渡ったのがリミットまであと4ヶ月しかないという状態で師匠の鳥海さんに「この作品が可愛ければやれ」と説得されて承諾したそうな。そこからはもうもうドロドロの日々で最後の一週間は押井自身もセルに色を塗りまくっていましたと語る。制作終了直後の試写を観て、スタッフと顔を見合わせて「こりゃ、ひでぇや。」と思ったらしい。
その反動もあってか、劇場版2作目の『〜ビューティフル・ドリーマー』の依頼がきた時にはもう話の骨格は頭の中に出来上がっていて、待ってましたと言わんばかりにコンテを書き上げ、アフレコ時にはもうほとんど完成していたというから驚きだ。そんなこんなでうまくいっちゃって結果として大変満足しています。やっと思ったとおりの映画になってその時は嬉しくてしょうがなかったと語っている。
この時から押井は音楽の現場に常に行くようになり、これで映画において音楽の重要性を認識したのか、これ以降クオリティーの高い音楽となっているが、作画に関しては全て任せていたらしくこの時点ではまだ絵に対する重要性というものは持っていなかったようだ。(制作費が無かったということも多いにありえるが)
しかし、押井節というか押井特有の独特の語り口調は健在でこの作品では無邪鬼という鬼が「夢がずっと続くんやったら現実なんか要らんのんやないか。なんで、そこまでして現実に帰りたがるんや。」「ほんなら、現実って何や?」というようなことを語っている。
夢という難しい題材であるにも関わらず、全く逃げずにその夢の世界(友引町の全貌)を描ききったことには本当に感心する。見終わった後は脳をハンマーで叩かれたようなグワングワンした感じが残り、押井守作品の中で一番衝撃を受けた作品ではないだろうか。


(参考文献:イノセンス 押井守の世界 PERSONA増補改訂版