下妻物語


この『下妻物語』、開始5分で「こりゃーアタリですな」と感じた。映画というもう確立しきった媒体を使って、尼崎の住民はヤクザと元ヤクザしかいないだとか、下妻の住民はみんなジャスコで服を買っているだとか、ナニワのおばちゃんは安いことしか魅力を感じないだとか、これを外国でも上映するのかは知らないが外国人が観たら間違った日本像をうえつけてしまうのではないかと心配するくらいブッとんでいる。
ストーリー自体は、その尼崎時代に作ったパチもんのヴェル○ーチを買いに来たのが暴走族女・イチゴでそのイチゴに主人公・桃子が得意な刺繍で特攻服の「夜露死苦」的な文字を縫ってあげることで友情が深まるという平凡な展開だが、その話の中でアニメを入れてきたり、カットの終わりに静止画を入れて歯切れをよくしたりと観客をダラけさせないようにしている。
ただ、水野晴夫が登場するところなどは後に何も残らない部類の「笑い」なので、そういうところを考えていくと、これって作品としてどうなんだろうかという危惧もあるが、演出面・音楽面共に非常に完成度が高く、『キッズ・リターン』以来の完璧な作品群に入ると思うので、現時点ではそんなことは忘れさせてくれている。
B+α