ほしのこえ


2002年にたった一人でつくられた映画ということで反響をよんだ『ほしのこえ』。それと同時に有名になった制作者である「新海誠」。
マンガでも見ることができるようになり、ついにはPSPでも見れるようになった。そんな感じでちょくちょく僕の耳にその名前が聞こえてきていたので、今回機会があった為、観てみることにした。
話の内容は、青春時代に生きる二人が恋をしていくというものなのだが、その中で彼女の方が遠い宇宙に行ってしまい、連絡できるのがメールだけという事態におちいってしまう。しかも、そのメールは遠い宇宙では届くのに何年もかかってしまうというもので、超遠距離恋愛の苦労のほかに、しだいに年齢のギャップによる苦悩も感じていく、というもの。
この「宇宙との超遠距離恋愛」というものは、早い者勝ちでいいものを発見したな〜と思った。しかし、他の日常の中のちょっとした描写の部分なんかは、まあ日頃みんなが思い考えついてることなので、どうってことはない。そして、この30分程度という短い尺は『カルネ』のような短い中での完成された作品ではなく、明らかに描ききれていない容量不足である。
まぁ、映画として観た場合は容量不足・演出不足という問題を指摘せざるをえないが、自主制作ものとして観た場合はこのクオリティーは鳥肌ものである。僕はこの作品を観終わったあとに、何を考えるでもなく、「な〜んかかっこいいなー」と思ってしまった。
たった一人で文明開化の鐘を鳴らした坂本竜馬。たった一人で天下統一をおこなった織田信長。そこまでとは言わないが、少なからずたった一人でアニメをつくり上げた「新海誠」はアニメ史の中に刻み込まれるであろう。
Bα

TAKESHIS'


TAKESHIS'
TAKESHIS'
posted with amazlet on 06.02.12

北野監督の『TAKESHIS'』を観てきました。
映画館に行って非常に印象的だったのが、観終わった人達が一斉にエレベーターに乗ったのですがその中で会話は一切なく重苦しい困惑した状態でした。そして、僕も同じく困惑していました。そんな中、自分のモットーを頼りになんとかレビューしています。
「夢」というのがこの映画を観ていく上でのキーワードとなるのだが、夢というのは見ている瞬間はすごいインパクトがあるが、見終わるとすぐに忘れて思い出せなくなる映像である。この映画もそのような雰囲気は上手に演出しているのだが、実際に作品としてそのような夢を描きだされても、面白いとは言いがたい。
夢というのはフロイトによると抑圧した無意識というもので、それは「本来認めたくない考え」や「死を直視するもの」であると考えていいと思う。そうするとそういう所から、この映画のメインテーマでもある、素の自分・寂しい情けない自分というのを関連づかせると良かったんじゃないかと思う。武さんもそのように演出してらっしゃったと僕は解釈しているのだが、それでも僕にはくずしすぎているようにしか見えない。
僕の「何か心にくるものがあり、何度も観たくなる作品」という基準に合っていなくもないが、これもストライクゾーンに入れてしまうと何でもありになってしまうので、ここは酷だが、B評価である。

恋の門


DVDというものが普及しはじめてからしばらくして、オーディオコメンタリーというものが出だしたが、あれを考えた人は本当にやるな〜と思う。今までは、パンフレットのようなものがそういう役割だったのだろうけど、あれだと映画本編を観ながら又、2時間たっぷりと楽しめちゃうのである。
今回もレンタルで『恋の門』を観たのだが、レンタルする場合はぜひDVDの方を借りてく欲しい。こっちには、なんと2種類のオーディオコメンタリーが入っていて合わせて3倍楽しめちゃうのである。
お得感で言ったら、豪華な出演者たちもそうで、マンガ好きなら思わず気になってしまう有名なあの方やこの方たちがいたるところに出ている。
だから、映画全体の評価というのではなくそのシーンだけという「点」の評価で捉えた場合、この作品はなかなかいい仕事をしているのではないだろうか。
終盤の主人公たちがマンガを描くシーンで、マンガを描きながら「楽しいーーーー!!!」と絶叫するシーンがある。マンガを描く集中力によって引き起こされたトランス状態を描写したものと思われる映像で、観ている側も思わずマンガを描きたくなってくるのだ。
他にも3回観て3回とも笑ってしまったシーンがあるのだが、主人公が絆創膏のようなものをはがしてペチンと投げ返すというシーンで、あのなんとも言えない体の動きとペチンという効果音とが合っていない不自然さが妙に可笑しいのだ。もう、僕としてはこの1シーンだけでやられたなと思ってしまう。
完成度で言ったら『下妻物語』なんかには劣ると思うのだけれど、僕のようなマンガ好きなんかは意外に『恋の門』の方がずっと覚えていたりするもんである。
B+

黒田硫黄作品


茄子 (1)
茄子 (1)
posted with amazlet on 06.02.13
黒田 硫黄
講談社 (2001/07)
セクシーボイスアンドロボ1
黒田 硫黄
小学館 (2001/11/30)


この人のマンガはすごく面白いんだけど、どう説明していいのか分からない。
どこが面白いの? と聞かれ、強いて言うとすると「登場してくる人たちが何かについての理想(性的なものを感じさせない男と女の友情という理想であったり、男を必要としないようなある種女神のような完成された女性という理想であったり、田舎でちょっとした畑をして本でも読みながら生きるという理想であったり)の極地を表しているような存在なので、どこか宇宙人のような印象すら受ける不自然さがコミカルなセリフ・構図(これもこの作者の大きな武器の一つ)と相まって心地よく楽しいマンガとなっている。」のようなぼや〜っとした文になってしまう。簡単に言ってしまうと、雰囲気が良いマンガなのだ。
これ以上言っても、もっと変な説明になってしまうので言わないが、確実に濃い部類に入るようなマンガを描くくせに爽やかなマンガなのでニクい作者ではある(笑)


『茄子』B+
セクシーボイスアンドロボ』A−

先ほど言ったコミカルなセリフの一例を紹介しておく。これで、どうにか作者の雰囲気をつかんで欲しい。

老人:いやあ、昔話だな。いかんいかん。
少女:まあ、老人が昔話をしないで誰がするの?

プラネタリウムにて−
青年:一番近い星の話は、いつ聞いても悲しいね。
少女:なぜ?
青年:遠いから。

コーヒーもう一杯


コーヒーもう一杯(1)
コーヒーもう一杯(1)
posted with amazlet on 06.02.13
山川 直人
エンターブレイン (2005/05/25)
口笛小曲集
口笛小曲集
posted with amazlet on 06.02.13
山川 直人
エンターブレイン (2005/07/25)

山川直人さんの短編集)


僕はあまり外でマンガを読まない。僕のマンガの読み方はイメージでいうと、どんどん深海に入っていく作業なので、周りの目があるとどうにも深海には行けないのである。
マンガの種類にしても、ガンガンページをめくるようなマンガも面白いのだがどちらかと言うと読んだあとにそっと本を閉じて物思いにふけりたくなるマンガの方が好きなのだ。
『コーヒーもう一杯』もそのようなマンガで、僕の中では宝箱に大切に入れてあるきれいな石のような存在で、気が付けば時々取り出してみて、ぽぉーっと眺めるのだ。
この作品の中では、中心になったり、傍らにあったりと、様々なスタイルでコーヒーが登場する。いつか、僕もコーヒーのブラックが飲めるようになったら、この本を持って喫茶店に入ってみたいと思う。
A−

今日の脳内処理行き


紅い眼鏡

押井守監督初の実写映画であるがこれは正直、失敗じゃないかと思う。何故かというと、押井特有の完成度の高さが全く見られないのだ。
イノセンス』では、たくさんの必要なシーンを作って、その中から厳選して何とか1時間半の枠に収めている。しかし、このの作品は押井自身が ただ、とにかく撮っておけば編集で勝負できると思った とか 延々と迷路の中に入るような映画だから何だっていいんだ とか どんなでたらめをやっても映画になるんだ とか言ってる通り、完成度が低い。
どうも8の素材からどうにかして10の作品をつくろうとしてるようにしか見えず、うすっぺらい映画になってしまっているのだ。 
しかし、この他にも「ケルベロス」作品というのは多数存在するのでめげずに観ていこうと思う。 C
(参考文献:イノセンス 押井守の世界 PERSONA増補改訂版